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| 「チュンチュン」小鳥の囀りで目が醒めた。が、まだ夢の中にいた。 重い瞼との戦いに勝利したのは、携帯電話の気の抜ける着メロだった。 「もしもし」 「・・・・・・・・・・」 「ええ、今、新宿駅に着いたところです」 「・・・・・」 「DJ?」 その日の予定はすでに決まっていた。遅い朝食を洒落たカフェでボサノバとハム エッグを食べ、その後にフランス映画を観る予定が、今朝の電話でフリーズして、 消去せざるを得なくなった。ミルクをグラス1杯呑んで、歌舞伎町を抜け西新宿に ある事務所へ向かった。事務所の重い扉を開くと、女所長が狭い事務所をグルグルと動き回っていた。 「遅〜い!!」 「向かい風でして」 そんな言い訳が通じるとは思わなかった。通じるとは思わなかったが、そこまで ヒステリックにならなくても、と思う位にしつこかった。 「で、DJが一体全体何なんですか?」 ヒステリック状態にある彼女の話をまとめるのは難しかったが、とにかく井上美 保という18歳 の少女からの依頼で初恋相手のDJを探して欲しいらしい。渋谷 界隈でまだサラを 回しているらしく、本来であれば実に簡単な仕事だ。が、しか し、写真も無く、名 前もわからず、情報という情報が無いらしい。いや、あるに はあるが・・・似顔絵 だ。 それも少女漫画から抜け出してきたような。しかも 丁寧に瞳がキラキラして いるやつだ。 その似顔絵と睨み合いながら、事務所を後にした。 新宿から山ノ手線に乗る間も、乗ってからも。 渋谷まで行こうかと考えたが、原宿で降りた。そっちの業界に詳しい友人に会う ために。もちろん少女漫画業界では無い。 友人の自称カリスマDJは竹下通りにある、B系の服屋さんで聞いたことも無い 国出身の不良黒人と英語みたいな日本語で会話を弾ませているところであった。 会話が一段落するのを待とうと、マールボロに自慢のジッポーで火を付けた時、俺 の存在に気付き、顔をくしゃくしゃにして笑顔を作った。だが、目つきの鋭さは昔 のままだった。 「久しぶりじゃん、最近どーよ。やっとそのだせースーツの衣替え?」 「だせーは余計だよ。それに衣替えでもないんだ。ちょっと聞きたい事があって な」 くしゃくしゃがアイロンをかけた様に、平らになり、親指を立てた腕で、奥へ インを出された。 店の奥のメッキのアクセサリーやどんな脚の太い女子高生でも履ける様なブカブ カしたズボンをが散乱してる部屋に入ると、自称カリスマDJは切り出した。 「俺のせーじゃないんだよ。あの女が吸ってみたいっつーから吸わしたら、警察 に勝手にパクられちったんだって。マジで」 3つ思い出した。こいつが薬物中毒者ってことと、こいつが開いたクラブパーテ ィーに行きたいって言う世間知らずのOLに酔っぱらってチケットを渡してしまっ たことと、そのOLの名前が次の日の朝刊に出ていたことを。 その件については、どうでも良かったが、この際だからそのネタを材料にさせて 頂いた。 似顔絵を見せると、別に顔色を顔色を変えるでもなく、普通の反応を示した。 「この絵、描いた奴も、この絵の男も知ってるよ」 驚愕を微塵も出さないように気を付けて、聞いた。 「興味深いねぇ。続けてくれ」 5日前に井上美保は自分の力に頼って、色々な人間に聞いて回っていたらしく、この薬中にも聞いていたらしい。自称カリスマDJだけあって瞳のキラキラしている似顔絵の男に井上美保の事を相談されていた。 「何故、井上美保ちゃんが聞きに来た時に、教えてやらなかったんだい?」 「何故?何故って真悟、あ、この似顔絵の奴は、三浦真悟って名前なんだけど、 こいつにライブで知り合った女にストーキングされてるって聞いてたからだよ」 「ストーキングとは物騒な話しじゃないか、具体的にはどんな事をされてたんだ?」 「何度もつき合え無いって言ってるのに、何度も告白されたらしいよ」 「それはストーカーじゃなくて、打たれずよい乙女心って言うんだよ。で、その 真悟って奴には何処に行けば会えるんだ?」 薬中は道玄坂にあるクラブの名刺を渡してくれた。営業時間が夜8時からとなっ ており、遅い朝飯を食べる事にした。 ・・・ つづく |
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